遺伝子は受け継がれるのか!?

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ペット(コンパニオン・アニマル)は子どもの情操教育に影響を与えると考えられているが、少子高齢化時代の世相を反映して我々を癒やす伴侶的な存在としても注目を集めてもいる。ヒトとペットを含む動物との関係は、進化、精神・心理的発達、ジェンダー、健康と福祉といった点で重要だが、まだ研究はそう多くない。

ペットを飼うことの影響とは

ネコ・ブームが起きたり、ザギトワ選手へ贈られた秋田犬が注目を集めたりし、ペット系のテレビ番組が多い状況も続いているが、こうしたコンパニオン・アニマルは多くの人にとって欠くことのできない存在になっている。 少子高齢化が進めば、子育てを終えた夫婦がペットを飼うようにペットを飼う家庭が増えることも予想できる。また、経済的に余裕ができれば、子どものために動物を飼うことも可能となるため、先進諸国の家庭の約半分が何らかのペットを飼っているようだ。 飼い主やペットのいる家庭の子どもにとって心理的感情的により良い効果のあることもわかっている。特に子どもの自尊心や孤独に耐える心、状況を客観視して他者を思いやる利他的な考え方(perspective-taking abilities)、知的能力の向上などに影響があるようだ(※1)。 14663人の子どものペット事情を調べた英国の研究(※2)によれば、イヌ、ネコ、ウサギ、マウスなどの齧歯類、インコなどの鳥類、熱帯魚などの魚類、カメといった、それぞれのペットの種類は、子どもの家庭の経済状態や兄妹の数と関係していた。また、母親が小さい頃にペットを飼っていたかどうかは、子どもにペットを与えるかどうかに影響を与える、という。 子どもだけではない。ペットを飼っている人は、そうでない人よりも長生きで健康にも問題が少ない(※3)。これは健康的な人にペットを飼う傾向があるというバイアスを除外しても明らかという。 なぜペットを飼うと健康に効果があるかといえば、ペットと触れ合うことによって様々な脳内物質(ホルモン)が放出され、社会的な関係性が安定することで精神に良好な影響を及ぼすのではないかと考えられている。例えば、イヌと視線を交わした飼い主の尿では「愛のホルモン」と呼ばれるオキシトシン(Oxytocin)の量が増えるようだ(※4)。 イヌが家畜化される過程で、こうしたヒトへの影響が出てきたと考えられている(※5)。オキシトシンの量は女性のほうが男性より多いという研究もあり(※6)、人格形成でも同様の研究があるがホルモンなどの分泌にも性差があるのかもしれない。 ただ、オキシトシンというホルモンには、民族排外主義などの排他性を高めたり、DV(ドメスティック・バイオレンス)を助長する側面があることが知られている(※7)。利他的行動を高める情操教育と矛盾するが、動物愛護組織にはシーシェパードのようなラディカルな団体もあり、もしかすると過激な行動がオキシトシンと関係しているのかもしれない。

 また、ペットを飼うことについては公衆衛生上も様々な影響がある。例えば、英国でペットを飼っている家庭の子どもを調べたところ、小児喘息(非アトピー型)のリスクが増加する一方、アトピー性皮膚炎のリスクは低下するという疫学調査もある(※8)。

「ペット好き遺伝子」の可能性

では、どんな人がペットを飼うのだろうか。過去の調査では、子ども時代にペットを飼う家庭で育った場合、大人になってもペットを飼う傾向があり(※9)、それは母親のペット好きに強く影響されるようだ(※2)。こうしたことからペットを飼うことに対し、遺伝的な影響があることも予測できる。 米国の双子研究(the Vietnam Era Twin Study of Aging、VETSA、※10)を使い、ペットと遊んだ頻度などを一卵性双生児と二卵性双生児とで比較した論文(※11)によれば、育った環境より遺伝的な要因のほうが成人になってからのペットとの関係に強く影響を及ぼしているようだ。 二卵性双生児より一卵性双生児のほうがペットと触れ合う頻度の相関が強かったことで、成人後にペットを飼うかどうかは環境ではなく、遺伝子の影響によることが示唆される。二卵性双生児と一卵性双生児の比較して異なる傾向は、兄弟姉妹や親子との関係、婚姻行動に似ているという。 もちろん、この研究で用いたコホート(集団)調査は、男性の双子のみであり、さらに参加者の多くは白人だったため、選択バイアスが強く働いている危険性がある。また、ペットといってもイヌやネコからヘビなどの爬虫類、熱帯魚、あるいは植物まで多種多様であり、ペットごとの触れ合いにも違いが出るだろう。 さらにいえば、子どもが育つ環境は多くの場合、両親や祖父母の性格や指向によって規定される。彼らがペット好きなら、自ずから子どもにペットを与える確率が高くなるわけで、それが環境因子なのか遺伝なのか分けるのは難しそうだ。 ただ、もしかすると「ペット好き遺伝子」というものがあるなら、そうした遺伝的傾向を持たない人とで性格や指向などが違ってくる可能性はある。小さい頃にペットを飼っていたほうが情操教育的な効果があり、成人後もペットが健康にいい影響を及ぼすとすれば、この遺伝的な違いは無視できないかもしれない。     引用元 因果関係があるかのかわかりませんが、少なからずペットは良いですよね。