ボロボロ担った女性の施設

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ごく普通の女性たちが、傷ついてたどり着く場所

東京都内のはずれにひっそりと立つ。最寄り駅はなく、深刻な被害を受けた性被害者、そして苦難から措置された女性たちを保護している施設だ。 「婦人保護施設は、根拠法が売春防止法。福祉の中では最もマイナーな存在で、一般の方々には売春に絡む特殊な女性がいるのではないか、みたいな感覚をもたれますね。実際はまったくそうじゃなく、ごく普通の女性たちが、傷ついて、傷ついて、結果的にはこういう施設にたどり着くといいますか。逆にたどり着けてよかったと思っています」(横田千代子施設長) 婦人保護施設は1956年制定の売春防止法と2001年制定のDV防止法が根拠法となって各都道府県に設置されている。全国49カ所しかなく、貧困や精神疾患などで自立して社会生活が送ることができなくなった、ボロボロになった女性が最後に措置される場所である。
いずみ寮の横田千代子施設長(編集部撮影)
「日本は法律に問題があり、単身女性を守る法律が売春防止法しかないのです。昔は売春する女性のみに適用されたのですが、解釈が広がって現代では女性全般に広がりました。そして今は貧困だったり、困難を抱えた女性たち全般を支援する施設になっています。 特徴としては、一般女性の精神疾患や障害、それから知的障害や、その背景にさらに暴力があったり。生きづらい要素を、本人の問題というより、成育のなかで過酷な状況下に置かれてきた女性たち、そういう方たちが利用しています。婦人保護施設という古めかしい嫌な名前ですけど、ここは生活をつくり直す場所なのですね」(横田施設長) 現在16人が利用。そのうち8人が外に勤めに出て、そのほかは施設内にある喫茶店勤務や就労継続支援、就労移行支援、定時制高校などに通っている。平均在寮は3年5カ月と長く、10年以上の人もいる。精神科受診者はなんと16人中15人で、暴力を受けてきた人は全員。性暴力を受けた人は16人中15人と、ほとんどが性虐待を受けて精神疾患という状態だ。 驚くことに、性虐待の加害者のほとんどが夫、内夫、祖父、おじなどの身内であるという。

時代にそぐわない形で残っている売春防止法

あまり知られていないが、売春防止法で唯一罰則があるのは女性による勧誘行為だけ。売春は違法行為でも、売る女性は「保護」されて、買う男性側には何もない。時代にそぐわない形で残っていて、法律に偏りがある。さらに、現在でも勧誘行為の摘発はたまに行われて、路上で街娼が男性に声をかけるだけで逮捕される可能性がある。 売春防止法制定の背景にあるのは、戦後の混乱期の貧困だ。そして、現在に至るまで女性たちの貧困は形を変えて継続している。戦後の貧困から売春に走った女性を保護したいずみ寮の利用者も、途切れることはない。貧困も形を変えて、路上の売春婦から、現在は性虐待の被害にあって精神疾患に陥り、貧困からはじめた風俗や売春でさらに傷つき、社会復帰ができないという女性たちだ。 「ここは終戦後10年目から。日本が最も貧困だった時代を生き抜いてきた女性たちを保護しました。貧困、街娼、生活難、お手伝いさん、子守りとか、今はこんな言葉使わないですけど、こういう女性たちが入所していた。背景にあるのは日本全体の貧困で、とにかく性を売買するしか手段がなかったわけです。しかし、高度経済成長やバブルを超えて、現代になっても精神科受診者は16人中15人、売春経験者は16人中12人。生きづらさを抱えた女性たちの苦境は、まったく変わってないといっていいのです」(横田施設長) 東京の片隅にある婦人保護施設は、まさに社会的貧困の縮図だった。
1日3食の食事が提供される食堂。1日の総カロリーは1700~1800カロリー程度に計算されている(編集部撮影)
施設内を案内してもらう。平日昼間なので女性たちは働きに出ていて、施設には誰もいない。それぞれに割り当てられる個室や、食堂は広く、専門の栄養士がメニューを考えた食事が1日3食提供される。安心できる場所で暮らしながら、ソーシャルワーカーたちが個別対応し、それぞれの方法で自立を目指している。

女性への偏見と抑圧

施設内を歩きながら、施設長はDVで苦しむ女性や子どもたちの話をしてくれた。性暴力に暴力、共通するのは身勝手な男性たちだ。節々に男性優位な社会への怒りを感じる。
入居者に与えられる個室。携帯やスマホは没収され、1年以上同じ勤め先で外勤した場合のみ、持つことが許可される(編集部撮影)
「婦人保護施設を利用する女性たちは全員なんらかの形で、暴力を受けてきています。なぜ暴力を受けるかというと、根っこにあるのはやっぱり差別。特に男性による女性への差別。女性への偏見と抑圧ですね。どの人もすごくジェンダーの問題と、日本がずっと引きずっている男性優位社会の影響が見受けられる」(横田施設長) 身体的、経済的、精神的な暴力を受けてシェルターに保護され、立ち直れなければ離婚から貧困、精神疾患となって、最終的には婦人保護施設にたどり着いてしまう。婦人保護施設は最終的なセーフティネットなので、最も状態や状況の悪い女性たちが集う。男性たちから受けるさまざまな暴力の中でも、最もダメージが大きく、婦人保護施設に措置される女性で数多いのが性暴力という。 「婦人保護施設だけでなく、乳児院とか児童養護施設とも関係を持っていますけど、未成年児童が受ける暴力で顕著に多いのが、実の父からの性暴力です。それが日本の現実です」(横田施設長) 筆者は十数年前から、貧困や性風俗の取材をしている。実の父親、義理の父親からの性虐待を受けた女性は、たまに現れる。大抵は、取材が終わる頃に「実は……」と女性たちから話しだす。親から性虐待を受けた女性は、そんな頻繁に現れるわけではないので今まで20人くらいか。それと実の母親から性虐待を受けた男性を1人知っているが、彼は先日自殺したと聞いた。

表ざたになりにくい児童への性虐待

児童への性虐待は国際的に重罪で、残酷な行為だが、家庭内で行われるために表ざたになりにくい。あと性虐待を受けている子どもが被害を自覚するのは大人になってからだったりする。児童相談所での相談件数は、実数と比べると著しく少なく、1540件にとどまっている。 「自分の子どもなのになぜ?って、いつも思う。でも絶対になくならない。これだけいろんな物や文化が発達して、学歴も高くなって社会性も高くなってきてるのになぜなのか理由を考えると、非常に未熟な男性の姿が浮かぶ。昔は父親に威厳があって女は男に従うという中でたくさんの性暴力がありましたが、今は未成熟な男性が身勝手に子どもたちに手を出している」(横田施設長) 人間は誰でも、生まれていちばん最初に信頼関係を持つのは両親だ。そのひとりである父親から性虐待を受けると、これからの人生、どうやって信頼をつくればいいのかわからなくなる。その後の人生にも影響する性虐待は、確かに横田施設長が指摘するとおり、女性の貧困の根本的な理由の1つになっている。 現在、苦しんでいる女性はどうすればいいのだろうか。 横田施設長は「行き場を失った女性は、性風俗や売春に頼る前に一度、福祉事務所や婦人相談所に相談してほしい」と言う。婦人相談所は売春防止法によって都道府県に設けられた行政機関で、検索すれば電話番号が出てくる。貧困やDVを筆頭に女性たちのあらゆる状況に対応している。検索に住所が出てこないのはDV加害者対策である。
敷地内にある喫茶シオンは女性たちの職場であり、地域の人たちとの交流の場でもある(編集部撮影)
生活保護や一時保護、就労支援、またひとりで生きていけない深刻な状態の場合は、いずみ寮のような婦人保護施設に保護される。女性たちは安心できる環境で苦しみを癒やしながら、少しずつ社会に出て生活をつくり直していく。

現行法はとにかく運用しづらい

「私たちは古い法律である売春防止法を改正して、新しく女性自立支援法、性暴力禁止法というのを作ろうと動いています。男性優位社会の中で生きづらい女性を社会で拾いあげ、女性が生きやすい新しい法律を作っていこうということです。性暴力禁止法は名称そのまま、社会から性暴力を絶対なくしていこうということを目的にしています」(横田施設長) 単身女性を救済する法律が売春禁止法しかないのは、女性にとって不利益は大きい。もし、自分自身が苦境に陥って支援されても、今度は差別を受けるなど、二次被害の可能性もある。現行法はとにかく運用しづらいというのが、女性支援の現場からの最も大きな意見、要望だった。 いずみ寮1階には、大きな作業場がある。2人の女性が大きな木製の編み機を使ってストールを織っていた。   引用元 https://toyokeizai.net/articles/-/248404
こんな施設があったなんて知らなかったです。
現状を見なければ何も変わらないので、今度の彼女たちの活躍が気になります。